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防除の日。
雨の予報が続く中、今日は朝から晴れ間が見えた。そう梨棚メンバーから朝一番に連絡があり、急遽梨棚の消毒をやることにした。週末にやる予定でいたのだが、確実に晴れる保証はない。雨が続けば雑菌が増える。抑え込むのは早い方がよい。というわけで農薬を準備して山を上がった。電話口で告げられた通り、山の上は晴れ。雨の合間にしては出来過ぎなほどの消毒にうってつけの日。500ℓの水を抱えた散布車両で梨棚の全てをまわり、午前中になんとか消毒を終えた。作業が終わった車体には無数の鱗片がへばりついている。これを綺麗に洗い流し、洗車してから日光に晒し、ようやく梨棚の世話に取り掛かった。
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stereoSprayer
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本格的な雨。
深夜から雨が降り続けている。降ったり止んだりを繰り返し、雨足は昼前からだんだんと強くなりつつある。山へ上がれないのは痛い。こうしている間にも梨の木は開花へ向かっているからだ。とはいえ焦る気持ちの反面、焦っても仕方ないというどこか冷めた気持ちもある。最近頻繁につかうチェーンソーを掃除して自宅の玄関に座り込み、時間をかけて刃を研いでおく。去年もそうだったが、剪定も後半になるとハサミを握る指に痛みが出て、太い枝を落とすのが負担になっているのだ。もう少し早く小型軽量の電動チェーンソーを多用してもよかったと今になって後悔している。チェーンソーはそのパワーで大事な棚線まで切断してしまう危険があるため、側枝には使いたくはないのだが、もうそうは言っていられない。
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中津市耶馬溪町
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雨の週。
午後遅くに天気が崩れて雨が降り出した。細い雨だ。予報では今日いっぱいは晴れ、明日から長い雨の日が続く。隣接する梨棚からは消毒の車両が動き回る音が聞こえる。明日からの雨に備え、菌の増殖を抑えるために忙しく動き回っているのだ。こっちは時計と雲を見ながら剪定を急ぎつつ、引き上げる頃合いを見計らっている。キリよく主枝の先端まで切れればよいが、その頃には日が沈んでいるだろう。雨も気になる。焚き火が雨で消えてしまわないようトタンで覆い、いつでも帰れるよう準備して枝を切る。今週は小雨の中、作業することになりそうだ。
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山国梨棚豊水幸水園
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蕾。
いまにも割れそうだった花芽が開いて蕾が姿を見せた。場所によっては花梗まで出て頭を下げようとしている。去年の今頃はまだ寒い日が続いていたように記憶している。蕾を見るのはまだ少し早いのだ。日田市の師匠に送ったショートメールの返信に、去年より5日早いと追記されていた。山にいると、季節の移り変わりが具体的な数字に置き換わる。この時期は特にそうだ。いつ一発目の消毒をやり、いつ頃に花を摘むのか。花が開くまでの過程は、同時に気温の上昇であり、菌類の活動が活発化する時期でもある。老農夫たちの頭の中に過去の暦が蘇って、去年は何日に消毒を開始しただとか、何日と何日が雨だっただとか、会話の中心が数字の羅列となる。こっちはその話を訊きながら、次の消毒作業と剪定のやりくりに思い悩むのだ。
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山国梨棚豊水幸水園
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降りそうで降らない雨。
朝からぱらぱらと雨が降っている。山での作業に差し障りはなさそうだが、予報ではすぐにもまとまった雨が降るとある。空を見ているとたぶんそうなるだろうな、というのはわかる。だから今日の作業は諦めて洗濯やら経理やら溜まっていたことをやることにし、買い出しで書い漏らした食材も買いに行った。まとまった雨は結局降らなかった。昼を過ぎても車のフロントグラスに水滴が付く程度でワイパーを動かすほどではない。貴重な1日を家事をやって過ごすのは大きなストレスだ。山へ上がっていれば1本は切れただろう。まあ、こんな日もあると自分に言い聞かせ、買い物の帰りに耶馬溪の道の駅駐車場でぼんやり煙草を喫った。山国川支流の遊歩道を老夫婦がのんびり通り過ぎてゆく。あの時間の使い方はしばらくは難しそうだ。
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道の駅 耶馬トピア
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菜の花。
菜の花の群生。山国ではあまり見かけないせいか、久しぶりに黄色い絨毯を見た気がする。県南部でよく見かけるサドガラも、そろそろ伸び始める頃だが、県北部の中津市ではまったく見かけない。火成岩の土地のせいなのか、たまたまそういう植生なのかよくわからない。雑草ですらそうなのだから農産物に違いがあるのも当然といえばそうだろう。県南部は暖か過ぎて梨は育ちにくいのかもしれない。山間の土地と海が近い土地。田舎はどちらも暮らしやすいが、個人的には山間の町が合っている気がする。
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中津市耶馬溪町
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古い街並み。
画像を整理していたら、古い街並みが出てきた。寺や路地裏だ。場所は臼杵市か杵築市のどちらかだろうと思うのだが、判然としない。撮った時期は、山国町で梨の研修を始めたばかりの頃。研修期間中にはまだ週末があり、土日は休めていた。空いたときにバイクで県内を走り回る時間的余裕がまだあったのだ。今はたった1日の休みをとることさえ叶わない。毎日スケジュールに追われている。しかし、この画像を残した日のように、不思議と気持ちの余裕だけはたっぷりある。仕事を終えて帰路につくとき、軽トラの窓から古い家屋と寺や神社が見える。画像に映っているような、美しく歴史のありそうな山門はないけれど、同じように安心して見ていられる風景だ。商施設も何もない山間の小さな町は毎日が平穏。自分が居るべき場所なんだろうと思う。
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不明
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ボトルブレンダー購入。
食べるものがなくなり米も尽きたので日田市へ買い出しに向かった。ついでに、もうじき尽きそうな枝の保護剤と誘引紐、それからジューサーも購入した。ジューサーで梨を砕いて飲もうというわけではない。梨の花が咲けば受粉作業をやる。その花粉のブレンドにジューサーが要るからだ。ジューサーの使い方を発見したのは梨棚メンバーで、これがやってみると実によい。受粉に使う花粉と基剤となる石松子をまんべんなく混ぜ合わせるのに、これ以上素早くしっかり攪拌する方法はないんじゃないかとさえ思える。残念なのは、花粉のブレンドに一度でも使ってしまうと、さすがにジュースをつくる気は失せるということか。
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BottleBlender 300ml
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開きつつある花芽。
暖かい日が続き、花芽が開こうとしている。この小さな鞘の中に蕾が6から9、それと葉が収まっている。開き切ると蕾はすぐに大きく膨らみ、続いて葉も開く。花芽が開いて小さな蕾が顔を覗かせた直後が、防除のスタートだ。黒星病やカイガラムシの発生を抑えるため、夏の収穫期まで、500ℓのタンクを装備した防除車両で梨棚を消毒する日々が続く。今日からしばらくは寒い日が続きそうだが、そうなると防除の開始をいつにするか悩む。冷え込む朝に、大量の水を散布しながら梨棚を走るのはなかなか辛い。だからといっていつまでも先延ばしにはできない。気温がどうあれどのみち数日後には赤い車体を梨棚に入れなければならない。
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山国梨棚豊水幸水園
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甘い匂い。
足場に乗って梨の枝を切っていると、ときどき甘い匂いが香ってくることがある。人工的に合成された匂いではなく、自然な甘い匂い。ずっと嗅いでいたい良い香りだ。匂いの原因は、残念なことに枯れ枝。そして、離れていても香るということは、まとまった数の枝が枯れている。棚線に顔を入れて、まわりを見ると剪定待ち一列先に枯れ枝が見える。どのみち、いまやっている剪定の邪魔になるので先に切っておいた方がよいだろう、ということで切り落とそうとハサミを入れると尚深く香る。冬に休眠しているはずの梨の木が、休眠できずに活動するとこんな枯れ方をすると聞かされた。枝が凍結する深夜、枝に残った水分が膨張して内破してしまうのだそうだ。栄養が行き届かずに枯れたにしろ、他の原因にしろ、今年使う予定で待たせておいた予備の枝まで枯れてしまうのは哀しい。
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山国梨棚豊水幸水園
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山国川と暖かい霧。
夜半に雨が降ったせいか朝は深い霧。日が登って明るくなると霧はすぐ払われたが、それまでの視界は100mほど。黎明の霧の奥にいる車両はシルエットが曖昧だった。霧の中を走っていると、以前の混雑した山手線に揺られていた出勤時間が嘘のように思える。今はただただ平穏だ。毎日予定に追われて忙しく、焦る気持ちは常にあるけれど、心身共にリラックスしている。矛盾しているようだが、本当だ。剪定が終わらないうちに花が咲いても誰も困らない。責任は自分にしかない。ときどき、ハンドルを握りながら、このまま竹田までラーメンを食べに行こうかと考えることがある。以前ならそんな心境にすらならなかった。結局竹田へは行かず、梨棚のある山へ上がって行くのだけれど。
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中津市耶馬溪町
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快適な曇り空。
朝のうち晴れ。太陽が顔を覗かせたあたりから以後はずっと曇り。2週間前なら寒い日だっただろう。焚き火から離れられないいつもの冬の1日だったはずだ。しかし、今日は午前中から気温が安定して15℃を超えた。太陽が出たままなら20℃を超えてダレたかもしれない。曇ってくれたおかげで絶好の剪定日和となった。快調に切り進めて午後の早い時間に1本終了。中規模の梨の木を終える新記録だったと思う。その後に大きな老木に取り掛かり、半分ほど切って1日を終えた。毎日この気温なら集中できてもっと早くに剪定を終わらせられるのだが、今年は雪が多く、雨で動けない日もあった。作業が天候に左右されるのは、いつまで経っても慣れそうにない。新米果樹農夫が抱えるストレスのワースト1だと思う。老農夫たちのようにどこか達観した目で空を見ていられないのだ。
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山国町市平
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満開の白い桜。
桜が咲いている。農道から見える山の中に、数は多く無いけれど白く小さな花が満開に咲き誇っている。最初見かけたときは、花粉樹と勘違いしてドキっとしたが、花粉樹は梨棚から離れtれて植えられることはないので、早咲きの桜かと腑に落ちた。もし花粉樹であれば、梨の花がすぐ続いて咲き、スケジュールは収拾がつかなくなる。まだ咲いてもらっては困るのだ。剪定はまだ残っているし、花粉を採集している時間もなくなる。いや、それより未剪定の木を受粉しなければならなくなる。花が咲くと枝は何倍も嵩張り、剪定が大変になる。去年は残った数本の木がそうだった。花が枝を隠してとにかく切りにくい。いずれにしても時間はそれほど残っていない。剪定を急ごう。
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山国町市平
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女竹集め。
朝、梨棚へ向かう前に竹藪に寄った。女竹が群生する薮だ。九州の山ならおよそどこにでも生えているだろうよく見る竹だが、細いと使い物にならない。だから、まとまった数を集めたいとなると、どこでもよいというわけにはいかない。太く成長していて、農道から近い竹藪は梨団地に1箇所しかない。早朝の農道は車両の往来も多いから、軽トラを横付けして手短に刈り取ってしまう。それから梨棚へ向かい、棚の下へ長い女竹を投げ込んでおく。これだけあればしばらくは集めなくても大丈夫だろう。女竹は梨棚の棚の補完に使う。棚線に乗らない枝の誘引先にするのだ。梨棚に結ばれた女竹は1年も経つとすっかり乾燥して翌年の焚き火のよい焚き付けになる。無駄がないのだ。
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山国梨棚豊水幸水園
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中古のキャリア。
先週、農機メーカーのエンジニアから連絡があり、状態のよい中古キャリアが出たと知らされた。本体を確認するため運搬してもよい、実際に使ってみませんかと言う。もちろん欲しいことは欲しい。現在電動キャリアを使っていて、不満が多々あるからだ。それに比較的平坦な豊水園には電動、傾斜地の新高園はエンジンのキャリアと使い分けられるのも魅力だ。紹介されたキャリアは今日午後に到着し、実際に走らせてもみた。さすが履帯は力強く、安定性も抜群で不安は一切ない。操作性もよい。しばらくエンジニアと話し込んで値段の交渉をし、購入を決めた。「じゃあ置いていきますね」とエンジニアは農具小屋にキャリアを入れてくれたが、先週の時点では今日ここにキャリアが来るとは考えてもみなかった。自力で探そうとしてもなかなかよい中古農機は探しきれない。そこは人脈のある誰かに頼る他にない。しかし、それにしても唐突だなあとは思う。中古のラップトップを購入したショップ店員からは、コンビニ袋にラップトップを入れて手渡された。ちょうどあの手軽さとスピード感なのだ。徳な買い物だなあとは思うのだけれども。
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山国梨棚豊水幸水園
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枯れ枝の断面。
去年まで元気だった亜主枝が突然ダメになった。亜主枝から伸びる側枝(果実を実らせる枝)が全て黒く枯死したのだ。衰弱し始めた枝は数年前からそうと分かる。しかし枝は見た目にも外皮にも異常がなく触感も正常そのものだった。チェーンソーで先を切って断面を見ると、正常な部分がほとんどなく、白くスカスカになったパンケーキ部分が広がっている。それから少しづつ輪切りにしながら断面を確認。正常な側枝が生えたところまで同じ症状が続いていた。こんなふうに枯れることもあるんだと、しばらく切り落とした亜主枝を眺める。樹皮は硬く、なのに軽い。変な感じだ。正常な枝は短くてもかなりの重さがあるが、枯れ枝らしく輪切りした枝を複数抱えてもまったく重くない。焚き火に運びながら、枝の空白地が新植できそうなことに気づき、幸水か豊水で補おうと決めた。
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山国梨棚豊水幸水園
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破れたハサミホルダー。
腰から下げていたハサミ類のホルダーが破れた。もともと剪定用ハサミ専用だったが、摘果から採集までいろんな形状の刃物を押し込むものだから、先端の縫い目が破れて刃先が飛び出してはいた。そろそろ交換の頃合いだなと新品の用意もしておいた。そうしたら驚いたことに裏地が布みたいに真っ二つに破れてしまった。よく見ると背面の生地は革ではなく合皮だった。革の部分は使い込んで痛んではいるものの縫い目の他はしっかりしている。合皮はこんな破れ方をするのかとまじまじ眺めてしまった。新品のホルダーは、日田市を離れるときに師匠が買い与えてくれたものだ。合皮パーツはない。どのくらい長持ちするんだろう。大事に使わせてもらおう。
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破れたホルダー/新品のホルダー
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オオイヌノフグリ。
梨棚の入り口にオオイヌノフグリが群生している。いつ咲いたのか記憶にないが、気がつけば青い小さな花模様の絨毯が広がっていた。去年はタンポポの黄色い花と一緒に咲いていた気がするが、この記憶も曖昧だ。オオイヌノフグリは太陽光に反応して花を開くらしい。今日はよい天気だった。山国らしく風こそ強かったものの日向は暖かかった。いつの間にか指先の痛みを感じない季節になっている。これはつまり梨の開花までもうすぐを意味してもいる。梨の白い花が咲くまでに剪定は終わらないだろう。今年は開花直前にすべて完了している予定だったのに、去年から腕前は成長していないということだ。気分的には分かったつもりでいても、現実は去年のままだ。今年は雪で9日間を無駄にしている。そのせいで遅れているのだということにして、明日からも残りの剪定を頑張ろう。
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山国梨棚豊水幸水園
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保護剤の開封。
今年の剪定を始めてから3つめの保護剤の蓋を開けた。このボトルひとつには1kgのペースト状保護剤が入っていて、梨棚全体で4つの蓋を開けそうな気がする。ペーストはノコやハサミで枝を切り落としたとき、切断面に塗布する殺菌剤であり、乾燥後に保護皮膜となって雑菌の侵入から枝を護ってくれる。梨の木の剪定には必須の薬剤だ。ただ、乾くまでは水溶性のため雨が降ると流れてしまう。だから今日のように雨雲が迫っている日は、早めに塗布を終わらせ、雨の降り始めには乾燥が完了するよう時間を調整しておかなくてはいけない。とはいえ雨が何時から降り始めるのか正確にわからないし、あるいは夕方まで降らないのかもしれない。このへんは各農家ごと対応が随分違うようで、雨が降っても剪定を止めない人もいる。今日は午後早めに剪定を中断して保護剤の塗布を済ませ、水路の掃除をやった。軽トラに乗って山を下りるとき、雨がぱらぱらと降り始めたが、こんなに正確に空模様が読めることは滅多にない。
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山国梨棚豊水幸水園
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快晴。
2月最後の日。昨日に続いて今日も快晴だ。雲ひとつない。残念ながら明日は天気が崩れるようだが、その後は良い天気が続くのではないかと勝手に思い込んでいる。上着のいらない日は本当に助かる。体が動かしやすく、剪定も当然捗る。寒い日とは対照的に、焚き火を暑苦しく感じるのは仕方ないとして、焼き払う枝集めと運搬も苦にならない。昔の人たちが春を待ち侘びる気持ちが分かるというものだ。今のような重機も車両も電動工具もなかった時代の農夫にとって、雪の多い冬はさぞや難儀だったろう。高機能な装備がない冬に、果たして農夫が務まるだろうか考えると、とても無理としか思えない。仕事を始める前の温かいコーヒーどころの話ではなく、死が常にそばにある冬だったんじゃないだろうか。
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道の駅やまくに
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チェーンソーの手入れ。
朝から快晴。雲ひとつない。放射冷却で冷え込む朝だが、それも陽が高い位置にくるまで。日中はもう春の暖かさだ。太陽の光があると枝のテクスチャがはっきり見え、枯れ枝を見間違うこともない。上着を脱いで木にかけ、寒さに震えることもなくひたすら剪定に集中でき、その状態が夕方まで続く、今日はそんな日だ。昼過ぎにチェーンソーを持ち出して枯れ枝を落とし、夕方に山を下りる準備をしてからブレードの手入れをやった。随分長いこと放置していたから気になってはいたのだ。陽が傾いても気温はそれほど下がっていない。枯れ草の上に座り込んで、チェーンのひとつひとつを丁寧に磨く。久しぶりの気持ち良い夕方。消耗したオイルも補充して、大鋸屑を本体から掻き出し、ピカピカにしてから軽トラに積み込んだ。この天気がしばらく続くとよいのだが。
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山国梨棚豊水幸水園
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危険な落下物。
ずっとすぐれない天気。オンタイムのどこかで必ず雨が降っている。そのせいか農道への落下物が多い。早朝に軽トラで農道を上がっていくと土砂や小石、人の頭ほどの石が道路に散乱しているのはしょっちゅうだ。今朝は中でもとりわけ大きい岩が農道に転がっていた。道の端で止まっていたため通行は可。しかし、こんなサイズの岩が運転中に落ちてきたら堪らない。山岳地の農道はこれがあるから怖い。梨棚で剪定をやっていると梨部会の農婦さんがやってきて、しばらくはあのままだからと注意を促された。三角コーンと、注意喚起の立て看板が設置されたのが昼過ぎ。市が対応してくれているのだろう。撤去には今しばらく時間がかかりそうだ。
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山国町市平
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鬱陶しい小雨。
早朝から雨。なぜ夜間に降って、朝に上がってくれないのか。作業が捗るのは午前中なのだ。午後になるとだんだん疲れが溜まって、仕事が少しだけゆっくりになる。喫煙の時間も長くなる。誰かが訪ねて来て時間を潰してしまうのは大抵午後だし、集中力が維持できるのも午前中だ。なのに、雨はなぜか午前中を潰してしまうことが多い。やはり朝目覚めてからしばらくの間が、体を動かすのに適しているのだろうと思う。午後から天気はゆっくり回復する予報だったが、山の上はずっと小雨が降っていた。昨日からの雨で山国川の流れも速く、山へ伸びる農道はアスファルトが乾いていない。明日もまた雨の予報だ。剪定のスケジュールはこれ以上の遅れを許さないほど逼迫している。
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耶馬溪町馬溪橋
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雑草参戦。
足場に座り込み煙草を喫っていてふと気づいた。雑草がもう伸び始めているのだ。つい最近まで梨棚の土は土の色をしていた。そこへ芝と菜葉のような雑草が葉を伸ばして広がりつつある。これらの雑草がしっかり成長すると次は背の高い草があっという間に伸び広がる。これから春、夏へと気温が高まると、刈っても刈っても消えない雑草との戦いになる。梨棚は窒素をたっぷり含んだ肥料や堆肥を散布してあるから、おそらく雑草の伸びも早かったりするんだろう。この戦いに費やす時間は馬鹿にならない。梨を世話する時間を割いて草刈りに当てるのは本当に無駄だと思うが、放置すると行動を阻害するほど成長してしまう。蔦は梨棚の天井に乗っかり、伸び切った雑草は機械を止めてしまうことさえある。その兆候が今日見え、うんざりする。
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山国梨棚豊水幸水園
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水道に詰まった氷。
朝、梨棚に到着してまず最初にやるのは杉の枯葉集め、次に小型バケツに少量の水を注ぐ。バケツに水を入れるだけだが、これがけっこう面倒臭い。水道は凍結していて使えないから、水路まで坂道を上がって汲みにいく。水は枝の保護剤用ハケを浸しておくのに必須なのだ。ゆるい坂なのに息が上がるし、今日は要らないというわけにもいかない。ただし、今日のように快晴の日は、水が水道から出ることもある。太陽が凍結した水道を暖めてくれるからだ。蛇口を捻って水圧をかけ、運がよければホースに詰まった氷がぞろぞろ飛び出てくる。朝から気持ちのいい天気だった。日中は10℃を超えていたのではないか。剪定にもってこいの日。上着を脱いで陽が傾くまで、身軽な軽装のまま剪定に集中できた。ずっとこんな空模様なら剪定はもっと捗るのだが、予定は遅延し続けている。
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山国梨棚豊水幸水園
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熟練生産者。
数日前、隣の梨棚の園主さんと立ち話をした。最初は天気の話から世間話を経て、剪定の詳細を訊かせてていただいた。隣の園主さんは、大分県の梨品評会の受賞常連だ。以前から剪定の話を聞きたかったが、仕事の邪魔はできないし、こっちの忙しさもあってなかなかその機会がなかった。面白いもので梨の品種は同じであっても農家によって、枝の扱い方はけっこう違う。梨農家毎にスタイルがあったりするのだ。品種によって大まかなガイドラインは勿論ある。けれども、枝の先端のどのあたりにハサミを入れるのか、ひとつとっても生産者からみれば違いがある。園主さんの話は興味深かった。勉強にもなった。今後どんな切り方をするのかはさておき、熟練生産者のワザを知らないでいるのかは損に感じた。知っているのと知らないのとでは、やはり大きな違いがあると思う。
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山国梨棚豊水幸水園
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なつしずくのトゲ。
夏雫(なつしずく)を剪定するとき、まず気になるのが、薔薇のトゲだ。台木のかなり高い位置で接木したらしく、薔薇のトゲが、なつしずくの樹幹を覆っている。トゲは硬く、うっかり握ってしまうとひどく痛んで、指先から血がぽたぽた落ちる。梨はバラ科の植物だから、なつしずくに限らず豊水でも幸水でも根っこに近いところからはトゲ付きの枝が伸びるのだけど、この木は特にトゲが多過ぎる。怪我しないよう先にトゲを切り、焚き火で焼いてしまう。それにしても、バラ科の植物に美味しい果実が多いのはなぜだろうと不思議だった。イチゴ、リンゴ、桃、びわ、他にももっとある。農婦さんから聞いた話では、バラ科の果実が優位なのは温帯だけで、気候が変わる場所ではバラ科の果実は影を潜めてしまうのだとか。海外の果実はまったく美味しくない。バラ科ではないからか、あるいは日本人が過剰にクオリティを求めるからなのかは、よくわからないけれど、日本の梨は最高に美味しいと思う。
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山国梨棚豊水幸水園
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山国川と峡谷。
予報では朝のうちに雨が上がるはずだった。ところが10時を過ぎ正午になっても、しとしと雨が降っていた。予報は更新されるたび雨上がりが先延ばしされている。たぶん止まないのだろう。雨の中剪定を続けると、枝の切断面から枯死しやすいと聞く。切断面の保護剤も雨に溶けて濡れない。それでもスケジュールの遅れを取り戻すために黙々と続けていたが、昼前にまとまった雨となり、剪定を中断することにした。頭を切り替えて、中津市街地へ買い出しに行こうと決める。切り落とした枝を焼くこともできないから、こんな日は消耗品と食料の補充だ。ということで中津市へ向かうと、耶馬溪を通過したあたりで晴れ間が見えた。いつもこんな調子だ。作業を中断すると天候が回復する。山から離れすぎてしまったため戻る気にもならない。馬溪橋駐車場に車を停めて空を見上げると、太陽が顔を覗かせようとしている。
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耶馬溪町馬溪橋
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竪穴式焚き火。
排水路の泥を掻き出すために置いていたクワで、何気なく穴を掘ってみた。深さは15センチほど、底は平にした。なぜ穴を掘ったかというと、ほんの気まぐれで焚き火用の穴があると点火し易い気がしたからだ。これまでは冷えた土から枝を離しておくために、灰を積んで台座をつくり、その上で梨の枝を燃やしていた。種火が地面から離れるし、翌日の火も入れ易く去年はずっとそうしていた。積み上げ式の弱点は、積み上げた枝が崩れる点で、なるべくそばに居て燃やす必要があったが、竪穴式は枝を穴に入れるため崩れ難い。それだけでも面倒が軽減されてよいのだが、実際にやってみると枝が燃え切っても熱をしっかり保持してくれて、次の枝が発火するまでの時間を短縮できるとわかった。竪穴式の方が効率がよいのだ。なぜこんな単純なことに今まで気づかなかったんだろう。剪定の手を止めて焚き火を見回る必要もない。たぶん穴の深さもちょうどよかったのだろう。これ以上深いと風が通らず燃えにくいかもしれない。ナフコで売っていたブリキの煙突があれば、穴をロケットストーブの炉に出来てもっとよく燃えるかも、と思いつき早速サイズを調べてみる気になる。うまくいけば倍の速度で枝を焼き切ってしまえる。着火に無駄な時間を費やすこともなくなる、と考えればやってみる価値はある。
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山国梨棚豊水幸水園
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凍りついた刷毛。
快晴だ。朝は震えるほど寒いが、陽が高くなれば気温も高くなるだろうと予想して山へ上がる。
実際にそうだった。正午を過ぎると上着が要らないほど暖かくなり、剪定が捗った。しかし、朝のうちはかなり寒く、手足の指が痛いほどだ。昼夜の寒暖差が大きく、日陰に居られない。3月まではずっとこんな日が続くだろう。だから昼間の暖かさで気が緩むと、翌朝にツケが回ってくる。今朝は、枝の保護剤を塗るハケが凍りついていた。片付けを忘れて梨棚に置いたままだったのだ。無理に氷を割ると、ハケが柄から取れてしまったりする。水道で洗い流すのがよいけれども、水道のホースも凍りついていて使えない。陽に晒して溶けるのを待つわけだが、その間保護剤が塗れなくなる。その他、せっかく集めた杉の枯葉を凍りつかせたり、焚き火の種火を濡らしてしまったりと、翌朝のスタートを鈍らせる失敗はよくやる。翌朝の冷え込みを、昼間は忘れてしまうせいだ。Location
山国梨棚豊水幸水園