• |  山国町の梨農家の日記  |

  • 彼岸花の道。

    出荷の途中、彼岸花が群生している水田の畦道がある。彼岸花は三倍体の代表的な植物だから、土中で球根を分裂させて密度を増したのだろう、畦道にはつい足を止めて眺めてしまうほどの彼岸花が咲いており、遠くで農作業をしている老人の背も含めて絵になる。このあたりの山道を走っていると、たまに山の深いところでも彼岸花をみかけることがある。種子をつくらない彼岸花が自生することはないから、ずっと昔に人が住んでいたのだろう。あるいは畑があったのかもしれない。今ではとてもそのようには見えないが、植物の特性がそうであったと語っているわけだ。

    彼岸花の道。

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    中津市耶馬溪町

  • 豊水の収穫終了。

    豊水の果肉に締りがなくなってきた。いよいよ豊水収穫の終わりだ。綺麗な豊水はとっくに摘み取っているから、まだ売れそうな摘み残しや、イマイチな実を集めていた。野球で言えば消化試合のような感じか。高い値のつく梨はもうない。あと数日収穫したら豊水幸水園の鉄柵を閉じることになるだろう。秋が深まる頃に礼肥をやり、落葉処理をしたら豊水幸水の1年がようやく終わる。次のスタートは年が明けた雪の積もる頃だ。

    豊水の収穫終了。

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    中津市街地の空

  • 花の壁。

    道の駅のバックヤードにすごい量の花束が出荷されていた。昨日、土曜日のことだ。世間のイベントからは隔絶されて生きている身としては、何が始まるのだ?といった疑問符が先に来る。敬老の日は過ぎているし、よくわからない。花々は色も大きさも落ち着いた草花といった感じで、利用目的がはっきりしているのだろう。花粉の匂いもほとんどない。送るのか仏壇に供えるのかも不明だ。ただ花の壁がそこにあって、圧倒されてしまった。

    花の壁。

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    道の駅なかつ

  • 落葉した夏みかんの木。

    終日雨らしい。朝から止んでは降る。出荷と収穫時の雨は実に困るのだけれども、今日は運良く間隙を突いて収穫まで完了できた。選果は自宅だから、雨が降っていると涼しくて助かる。今日の午後は寒く感じるほどだ。庭にある夏みかんの木はすっかり葉を落としてしまった。濃緑の丸い塊だけが枝に残されている。農産物販売所では、もう新高が出荷されている。いよいよ秋に突入となった。豊水園にはまだ豊水が下がっていて、小さかった果実がまだ大きく太ろうと頑張ってはいる。明日雨が上がればまた暑さが戻ってくるだろうが、それも太陽が空にある間だけだろう。夜間はぐっと気温が下がって山国耶馬溪らしい長く寒い季節がそこまで来ている。

    落葉した夏みかんの木。

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    中津市耶馬溪町

  • インボイス制度。

    10月から施行されるインボイス。登録しないでいると出荷先に制約を受けるようだが、元々JAへの出荷が多い山国梨棚はあまり影響がない。理解するには複雑すぎる税金の話だから、ざっくりと聞いた上で漠然と判ることは、個人商店への出荷をどうするかということに集約されるようだ。しかし、よく考えてみると問題はそこだけではない。消費税はさておき、個人商店への出荷でしかロゴマークが使えない山国梨棚にとって、商品である梨の生産元が個人名でしか認識できなくなる、というわりと大きな問題に置き換わるわけだ。このブログも出荷先の選択によっては続行する意味が消失する。あらゆるモノとサービスが値上げされている今、梨棚の経営と運営だけでも頭が痛いのに、個人商店への出荷が難しくなると消費者との接点が、ごっそり失われてしまう気もする。訪問者の少ないブログなのだが、梨の味とマークを結びつけて記憶し、ブログを訪問してくれるお客さんもいるのだ。梨棚のメンバーと話し合いが要る、最初の問題となりそうだ。

    インボイス制度。

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    日田市上津江町

  • 巨大アーム付き車両。

    山を下っていると、ときどき林業の車両が狭い農道を塞いでいることがある。農道のあちこちには伐採した木材を一時的に積み上げておく広い空間があり、そこから木材を積み出すときにやって来るのが巨大なアームを装備した車両だ。車両の後方にアームを操作する高い座席があり、操縦者は実に器用に木材を挟んで荷台へ積んでいく。よく落とさないものだなあと一見不安定に揺れる材木を見ながら、長さまできっちり揃える手際は気持ちがよい。操縦者は後続車両が近づいてもすぐに操作を止められないので、約5分ほど、こっちは見物客となる。煙草に火を点けて半分ほど喫ったらこっちもエンジンを始動する。山の上でしか遭遇できない光景だ。

    巨大アーム付き車両。

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    山国町市平

  • 梨品評会、受賞ならず。

    朝から山国だけ雨だ。出荷を済ませて山へあがると、雨はもう止みつつあり農道はしっかり濡れてる。こんな日にありがちな蚊の大群が梨棚の下で待ち構えていて、鬱陶しい蚊やハエを腕で払いつつ収穫を続けていると、悪い知らせがあった。梨棚メンバーからの連絡では、今回の大分県梨品評会で受賞は叶わなかったらしく、壮大な前フリがしっかり効いた結果となった。詳細はまだ判然とせず、何処の生産地が受賞したのか判らない。少なくとも山国町から受賞者は出なかったようだ。もう何年も連続で受賞者を輩出してきた山国町の梨組合だが、今年は無冠だ。

    梨品評会、受賞ならず。

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    山国町市平

  • 夏の終わり。

    朝から暑い。暑いけれども夏が終わろうとしているのは判る。稲穂が色付き、豊水梨は真っ赤だ。ちらほら水侵を発症しているものもある。目が慣れてきたせいか、摘む前に水侵した果実に気付けるようになってきた。しかし、この時期になってくると残った豊水の多くは諦めて落とさないといけない。健康な梨だけを摘むとすると残りは少ないだろう。来週の末あたりを区切りとするのが丁度よいかもしれない。新高の収穫が始まれば、もう秋だ。Tシャツ一枚でやっていた選果がロンTになり、新高が終わる頃になるとロンT一枚でも寒くなる。ようやく梨農家の1年が終わる。

    夏の終わり。

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    中津市耶馬溪町

  • 豊水梨、優良賞受賞。

    梨棚メンバーから連絡があり、中津市農産物品評会で豊水梨が優良賞を受賞したらしい。部門は無袋だ。無袋というのは、梨の子房に袋を掛けずに育てた豊水梨のことで、有袋はその逆、袋で包んで育てた梨を指す。袋で包めば直射日光を遮断し、日焼けしたり虫に食われたりといった被害をかなり軽減できる。無袋は剥き出しの路地栽培だから、蛾に吸われたり食われたり、日光を受けて片面が赤く焼けついたりもする。どちらが良いかと問われれば、もちろ有袋がよいのだが、袋は無料ではないし袋を掛ける手間はかなりのものだ。今回出品した豊水は無袋、県主催の品評会のあきづきは有袋で出品した。中津市の品評会で賞をいただけるとは考えておらず、意外な知らせだった。ありがたいことだ。

    豊水梨、優良賞受賞。

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    中津市三光

  • 午前6時、朝焼け。

    出荷に向かう直前、軽トラにコンテナを積み込もうと玄関のドアを開けたら空気が赤かった。朝から暑かったせいで肌を晒していた上半身がピンク色に見える。夕焼けと違って朝焼けに色付いた空気はすぐに消えてなくなる。コンテナを積み込み終わる頃には太陽が雲の切れ間に見え、いつもの空気に戻っている。明日から三連休だから、今日はいつもより多くの梨を包んだ。商品は今日動かなくても明日からまとめて売れてくれるはずだ。朝焼けは午後から天気が崩れることが多いから、急いでエンジンを掛け中津市街地へ向かった。雨が降ると収穫が面倒だ。出荷を済ませて急いで山へ上がらないといけない。

    午前6時、朝焼け。

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    中津市耶馬溪町

  • 梨品評会に出品します。

    今年も【大分県なし研究会果実品評会】に出品することにした。昨年は銀賞をいただいて驚いた。気をよくした山国梨棚は、今年は金賞を狙うべくメンバーと時間を合わせて午前中から選果に取り掛かった。品種は「あきづき」で有袋部門だ。最初に結論を言うと、申し分ない仕上がりであり、味も食感もよく、ピラーで皮を落とすと果汁が滴る。テクスチャは女性の肌のように白く姿も丸く美しい。これで受賞できなければ、他にどの梨が王座に値するというのか。2023年度の金賞はもういただいたも同然である。

    梨品評会に出品します。

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    梨品評会出品作品/あきづき

  • 耶馬溪町。

    道の駅なかつへ出荷したあと、羅漢寺方向から帰宅する。7月の大雨でまだ復旧していない道路があるというのに羅漢寺橋はびくともしていなかった。鉄橋であっても欄干が捻じ曲がるか破壊されているのに石造のアーチ橋は以前のままの姿だ。地元の人に言わせると、アーチ橋の太い橋脚が水流を止めて冠水の原因になるのだそうだが、それにしても堅牢な古い橋には驚かされる。耶馬溪は景観だけでなく古いインフラや建物がまだまだ残されていて、大正時代から昭和初期の木造建物など、気まぐれな運転でジブリ的な風景に出くわしたりもする。出荷で忙しいなか、穏やかな気持ちになれる瞬間だ。

    耶馬溪町。

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    耶馬溪町羅漢寺橋

  • 虹色コガネ。

    収穫が終わってふとまわりを見ると、乗用草刈機のカバーの上にマメコガネの死骸が転がっていた。全身虹色に輝いて、昆虫の死骸とは思えない華やかさだ。体は人の小指の爪ほど。昆虫の死骸は腹が上になるものだが、うつ伏せのまま動かない。そういえば去年は無数のカナブンとオオスズメバチが飛来したものだが、今年はほとんど見かけない。理由は単純で、水浸を発症した豊水が無いからだ。去年は枝に下がった熟れた豊水を大量に落とした。今年はそれがないから虫たちを引き寄せないのだ。虫罠を準備して身構えていたけれど、無駄に終わったのはよいことだ。

    虹色コガネ。

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    山国梨棚豊水幸水園/マメコガネ

  • 販路拡大。

    毎日よく晴れているのに、午後になると通り雨が降る。上空は青空なのに雨はどこから落ちてくるのか、軽トラのフロントグラスは汚れを引いた後がくっきり残っている。今日は収穫を終えてから、新規販路を求めて北九州へ下見に行ってきた。目星をつけている販売店は申し分なく、登録を済ませれば梨を出荷できそうではある。しかし、売れ残ってしまった梨の回収など問題も残る。出荷先が増えれば待機状態の梨を減らせてスムーズな出荷が期待できるのだが、なかなか難しい。帰路に豊後高田市へ向かおうとしたが、日が落ちてしまったのと、選果も手付かずのため日を改めることにした。遠くから眺める中津市の夜景は雨に濡れて寂しい。

    販路拡大。

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    中津市夜景

  • 戻ってきた猫。

    コンビニの猫が生きていた。電気料金の支払いで立ち寄ったとき、ゴミ袋を集める店員に寄り添ってあくびをしていた。しばらく姿を見なかったのは、猫にだって都合があるということだろう。いつ立ち寄っても必ずそこにいた猫の姿がないと、何かが足りなく感じるのだ。猫は前足を舐め、顔を洗いつつコンビニ店員のそばを離れなかった。路肩に転がっていた茶トラは可哀想だが、コンビニの白混じり茶トラが元気なのはよかった。支払いを終えてコンビニを離れつつハンドルを次の出荷先へ向けた。日が登るとまだまだ暑い。

    戻ってきた猫。

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    山国町コンビニエンスストア

  • あきづき出荷開始。

    あきづきの出荷を開始した。少し早い気もするが試食してみて十分だろうと判断した。無袋で育てているため鳥や蛾の襲来に無抵抗だから、出荷は早いに越したとはない。それに、あきづきの木はまだ幼木だ。収穫量もほんの僅か。摘めば数日で出荷を終えてしまうだろう。豊水を摘みつつ、あきづきも同時にとなるとなかなか面倒なのだが、幸水も豊水も年を経るごとに切り落とす主枝の数が増えていく。その穴を埋めてくれるのが新植したあきづきだ。この先、枯死で終わる幼木もあるだろうが、幸水と併せて不足分を補わなければいけない。

    あきづき出荷開始。

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    山国梨棚豊水幸水園/あきづき

  • 朝顔風の雑草。

    自宅の草刈りを放置したままだ。出荷時期は他のことが何一つできなくなる。朝から包装と出荷で忙しく、昼からは山へ上がって収穫、帰宅してから選果、そして翌日の出荷の準備だ。1日中梨を触っていて、他に握るものといったら軽トラのハンドルくらいか。そんなわけで、自宅のまわりは雑草が生い茂っている。刈り取る時間がないのだ。そろそろ刈払機を持ち出さないと、と考えていたところで朝顔が花を咲かせ、もうちょっとこのままでよいかと考え直して今日に至る。雑草とはいえ、花はそれなりに綺麗だ。そしてこの朝顔。昼になっても閉じないところをみると朝顔ではないのかもしれない。

    朝顔風の雑草。

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    中津市耶馬溪町

  • 農道復旧。

    7月だったか、線状降水帯に削られて陥没した農道がようやく復旧した。コンクリートで補強していた箇所がポイントで崩れ落ちたのだ。農道の下には雨水の水路があるらしく、長い時間をかけて脆くなっていたところに局所的な大雨が留めを刺した。この農道は新高園へ通じる近道で、個人的に困っていたから復旧はありがたい。もっと時間がかかるだろうと踏んでいたので本当に助かる。崩れ落ちた箇所はアスファルトでしっかりパッチが当てられている。残る問題は破裂した水道管のみとなった。これの復旧はまだ先だ。

    農道復旧。

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    山国町市平

  • 消えた茶トラ。

    いつも利用しているコンビニ猫の姿が見えない。いつも入り口のマットやゴミ箱の上で寝ていた腹の白い茶トラだ。穏やかな性格で来客に可愛がられていた。今朝の出荷で中津市街地から山国へ戻ったとき、コンビニ近くの路肩に倒れている茶トラを見かけた。まさか、と嫌な予感を頭から追い出し、駐車場の車止めに頭を乗せて寝ているいつもの茶トラを思い出す。しかし、出荷のあとコンビニに立ち寄ると茶トラの姿はなかった。あの猫が気になるのは、たぶん自分に重ねてしまうからだ。路肩で唐突に迎える死と、梨棚で動けなくなる農夫にたいした違いはない。ひとつだけ違いがあるとすれば、猫の死を悲しむ客はきっと多いだろうけれど、農夫の死は誰の気持ちも動かさないだろうということか。いや、まだ茶トラが消えたとは限らない。明日コンビニに軽トラを停めたら寝ている茶トラがいるかもしれない。

    消えた茶トラ。

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    山国町コンビニエンスストア

  • 気持ちのよい朝。

    山国町から耶馬溪を抜け、三光あたりにさしかかると風景ががらっと変化する。溶岩石の山々が消え、視界が唐突に広がり、道が直線になる。道の駅なかつはこの先だ。この辺りは中津の風景らしくない平野部だが、大きな通りを外れるとやはり中津らしい風景が広がっている。日本中の小さな町ならどこでも見られる水田が広がる風景だろうけれども、東京都心で何十年も暮らした者にとっては、この上なく気持ちのよい眺めだ。今朝はいつもより少し早く出発した。八面山方向へ走り、ちょっと遠回りで最初の出荷先の道の駅へ向かった。

    気持ちのよい朝。

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    中津市三光

  • 終日青空。

    久しぶりの青空だ。雲は高い空まで伸び、日中は暑く汗をかくが、もう8月の暑さではなく日陰は涼しい。梨棚の枝葉の下はもっと過ごし易く、収穫も捗る。梨の世話には大量の水を必要とするから、雨は降ってもらわなければ困るけれど、収穫は晴れていないと難しい。果実が濡れてしまうとテクスチャや傷跡が見え辛くなり、果口に残った水滴が雨によるものなのか果樹異常なのか見誤ってしまうのだ。昨日、今年最初の果樹異常を出してしまった。即売所の売り子さんが見つけてくれたお陰で、お客さんが買うことはなかった。袋を破って確かめると、果口が落ちてしまう芯腐れでこれも初めての経験だった。

    終日青空。

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    中津市耶馬溪町

  • 色づく稲穂。

    山国町でいちばん高い斜面にある棚田が色づき始めた。緑の絨毯がうっすら黄色に変化しつつある。幸水が終わって豊水の出荷が本格化する今時分、緑一色だった山にも変化があって欲しいものだが、杉ばかりの山は一年中ずっと緑だ。そのせいか、水田の稲穂が鮮やかに際立って秋を感じさせ、きつかった暑さが次第に遠のいていく気配がある。山国から耶馬溪の冬はなかなか厳しい。豊水に続いて新高の収穫が終われば、そのまま冬へ突入する。植物の世話をしていると1年はあっという間だ。

    色づく稲穂。

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    山国町市平

  • 老人の話。

    毎朝出荷で中津市街地へ通っているといろんな人に会う。ほとんどは会釈をする程度、顔に見覚えがある程度の人たちなのだが、中には話しかけられてそのまま短い雑談を交わすようになる人もいる。中津の梨農家は海岸側グループと山国から日田市の山地側グループに分断されており、山国の農家と市街地の農家はほぼ面識がない。だから海岸側で梨をやっている老人に話しかけられると、話が面白く感じてしまったりするのだ。道の駅ができる以前は市場しかなく、出荷先に難儀していただとか、気温が高くなり過ぎて世話を諦めた梨の品種の話だとか、山国の梨団地では知り得ない昔の話や苦労話が面白いのだ。「さっぱり売れないね」とか「少量を継続的に持ち込むといいよ」だとか老人は福岡と大分の方言が混ざり合った訛りで毎朝短く話しかけてくれる。梨が売れない日は、これが案外気晴らしになる。

    老人の話。

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    中津市大貞公園

  • 肌寒い朝。

    早朝が急に肌寒くなった。Tシャツ一枚でよかった出荷の道中が冬用の作業着でも汗をかかなくなった。まだまだ蒸し暑い朝もあるだろうし、陽が差し込めば毎日暑くはある。けれども季節はゆっくり秋に向かっている。豊水の出荷が全て完了し、新高の様子を見ている頃には指先が冷たくなっているだろう。今朝もすっかりルーティンとなった出荷ルートを巡って山に上がった。8月はあっという間に過ぎていった。9月もこの調子で過ぎると思うと虚しくも感じる。出荷作業に忙殺され、ふと我に返るのは軽トラを運転しているときだけかもしれない。窓の外を流れる風景はいつでものどかで平和だ。

    肌寒い朝。

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    道の駅なかつ

  • 水田の草刈り。

    8月の間中どこにいても聞こえていた刈払機のエンジン音が聞こえなくなった。山にいても自宅でも運転中でも必ずエンジンを背負った農夫や作業員の姿を見かけたが、それもひと段落ついたのか遠くに聞こえる蝉の鳴き声だけとなった。中津市へ引っ越してきた頃はうるさく感じたが、今はもう慣れっこになってしまって、エンジン音が聞こえないとやけに静かに感じる。それにしても綺麗に刈り取られた水田の法面は作業員を雇ったかのようで、古墳の斜面のように見える。水田のない港町で育ち、長い時間を東京で過ごした者には、ここまで綺麗に管理するのかと、初めて見たときは驚かされたものだ。あとで知ったのだが、チップソーを使うのではなく、仮払機の頭にワイヤーカッターを装着してやるのだそうで、そうすると雑草を細かく砕けるのだ。

    水田の草刈り。
  • 小さな漁港。

    お盆休みが終わった8月末。この時期は週末でもないかぎり客の動きが緩慢だ。月曜日の今日は出荷した梨がほとんど動かない。この状態を見越して出荷数を絞っているのだが、それはそれで在庫が増えて困る。長い時間選果場に置いておくわけにはいかないのだ。どこかで売り切ってしまわないといけない。週末に向かって客の動きが活発になるのか、ならないのか、もどかしいところだ。去年もこの時期は収穫と出荷のバランスが崩れて焦った。今年も同じだ。しかし焦っても仕方ないことは判っているし、売れ行きのレポートが届くまでは選果をストップして、車を国東へ走らせた。たまには息抜きも必要だ。国見町あたりで天気が崩れ始め、中津市へ戻った頃には雷雲が激しく唸っていた。雨になりそうだ。

    小さな漁港。

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    大分県国東市

  • 法垣遺跡。

    朝から暑い。道の駅なかつに出荷を終えたあと、道の駅の敷地内にある法垣遺跡のベンチで涼んだ。手にはコンビニのコーヒー。暑さを避けようとして東家まで歩いたが熱いコーヒーではまったく涼しくならない。汗を拭いながら法垣遺跡の説明文を読むと、3500年前の村の跡地と書いてある。堀立柱建物は九州では珍しく、土器と人骨が出土したのは2例しかないらしい。道の駅の利用者から見れば道の駅の敷地に遺跡がある感じだが、地図で俯瞰すると遺跡を中央に、その隅に道の駅の商施設がある。道の駅が開くまで、まだかなりの時間があるのに第一駐車場は既に満車。東家から眺めると、施設内のテラス席では開店を待つ客がうろうろしている。こんな週末は午前中で出荷した梨が完売してくれるのだ。

    法垣遺跡。

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    中津市法垣遺跡

  • バッグシーラー。

    豊水の出荷を開始した。幸水と同じように販売店を回り、その後山へ上がって収穫、そして選果のために帰宅する。1日で汗をかくのは収穫であり、神経と時間を使うのが選果だ。選果が済めば包装となるが、水分の塊である梨を防曇袋で包むと梨が汗をかいてしまうので、出荷直前の翌朝からの作業となる。だから目覚めてから出荷までの流れは大忙しだ。夜のうちに準備しているとはいえ、梨を袋で包み梱包テープで止める作業はなかなか時間がかかる。販売店が開く時間までに急いで包装を済ませて出掛けて行き、また帰宅しては次の荷を積んで出てゆく。防曇袋を止めるシールとバッグシーラーはいまのところ2つ。もうひとつ色違いのテープを使いたいけれど、選果場に3つのバッグシーラーはさすがに邪魔だ。テープの色を変えれば価格シールを貼るときの目印にもなってよいのだが、金属のボディが梨を傷つけたりもするしで悩ましいところだ。

    バッグシーラー。

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    バッグシーラー/gold & green

  • 豊水収穫開始。

    早い時間に自宅を出発して豊水の収穫を開始した。いくつか摘んで味見をしてみたがまだ微妙だ。もう少しまった方がよいかもしれない。が、陽当たりのよい枝の実は赤く色付いてしまってもいる。熟した果実を食べると充分に甘い。だからなるべく完熟直前だけに絞って摘み始めた。早朝の収穫の弱点は虫が多いこと、そして青い色の残る朝日が豊水のテクスチャを違って見せてしまう点だ。ちょうど良い熟れ具合が判り辛いのだ。糖度の乗りも考えて、今朝は控えめに摘んで山を下りた。道の駅でコーヒーを買い、コンテナにいっぱいの摘んだ豊水を見ると、まだ早く青いものが混ざっている。赤く見えていた実が、まだ青い。ナイフで切って味見するとぎりぎりの糖度。この時期の収穫は本当に難しい。

    豊水収穫開始。

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    豊水/450g

  • 山百合と豊水。

    朝のうち雨。雨量は少なく、もうちょっと降ってくれてもよかった。梨棚に到着する時間には青空が雲の切れ間に覗き、午後は晴れるんじゃないかとさえ思える。園をまわって虫食いの豊水を摘み、軽トラのトランクに並べて試食。今日はそのために山に上がったのだ。結論から言うと収穫を始めようと思う。去年は百合が咲くよりずっと遅くに詰み始めた。今年は受粉が前倒しとなったぶん早くてよいかもしれず、ちょうど山百合の時期だ。豊水の味は、摘んだ木によってまだまちまちではあるものの、明日はコンテナを軽トラいっぱいに摘んで山を上がろうと思う。

    山百合と豊水。

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    山国町市平