• |  山国町の梨農家の日記  |

  • 道を塞ぐ倒木。

    午前中に軽トラの修理部品を注文してから山国へ戻った。雨は降り続いているが、予報では午後には上がるようだし、降りも徐々に弱まってゆくだろう。というわけですぐ山へ上がったのだが、市平の集落を通過する手前で立ち往生してしまった。倒木が電線に絡んでいるようで、ゴンドラ付き工事車両が倒木の撤去を急いでいる。工事管理者らしき人が雨の中走ってきて「すぐ通れますから」と伝えてくれた。荒れた天気のあとは、よくあることだ。人の拳大から頭ほどの石が農道に転がっていたり、ときにはクレーンが必要な岩が道を塞いでいることさえある。煙草に火を点けて修復工事の様子を伺っていると、一本喫い終えないうちに三角コーンが撤去されて道が開いた。作業員の到着が遅れていれば山へは上がれなかっただろう。ありがたいことだ。

    道を塞ぐ倒木。

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    山国町市平

  • 土砂降り。

    朝5時に自宅を出て山へ上がった。午後には天気が崩れそうだから、少しでも農作業の時間を確保しておきたかった。梨団地のある山の上は晴れ。陽射しも届いて暑いくらいの陽気だが、湿った風が台風の匂いを運んでくる。煙草を口に運ぶ回数を減らし、なるべく作業に集中していると午後には空が怪しくなり、やがて梨の葉を叩く雨音が聞こえてきた。降り始めから重い雨だ。すぐに農具を片付け梨棚を出て軽トラに乗り込むとザーっと降り出した。肩の傷が塞がるまでは雨に当たりたくない。エンジンを掛けて山を下ると雨はますます強さを増し、道の駅を通過する頃には土砂降りとなった。この振り方だとたぶんすぐ上がるだろうな、と予想しつつ早い帰路についた。

    土砂降り。

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    道の駅やまくに

  • 新高の子房。

    中津市街地は午前中雨だった。軽トラのオイル交換と車体の検査に時間がかかり、山国へ戻ったのは午後になってからだった。海岸部の重い雨雲を抜け、山国が近くなると青空が広がっていた。この天気なら農作業は問題ない。どこへも寄らずすぐ山へ上がり、今日も黙々と新高の摘果を進めた。新高の子房は豊水幸水に比べて大きい。手のひらに6つも乗せれば一杯になる。この子房が10月になると、ひとつ800g〜1kgの梨になる。特に大きいものになると2kgを超えることもある。その重量を新高の枝は10月まで支え続けるのだ。台風が直撃すれば落果の危険があり、カラスや虫にも狙われる。晩成種の梨は世話の苦労も大きいぶん、山国の環境に適して美味しい梨に成長してくれる。今年の冬は寒く、春先に雹の被害もなかった。このまま何事もなく収穫期を迎えたい。

    新高の子房。

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    山国梨棚新高園

  • 梅雨入りの雨。

    朝から雨。台風らしいまとまった雨量だ。山へ上がるのは諦め、午前中は床屋へ行った。1年以上放置していたせいで髪が伸び放題になっていたのだ。冬の剪定から春先の受粉、そして摘果まで1日のロスも惜しい遅れがあったため、自分のことは後回しだった。午後はそのまま山国の渓谷へ向かってゆっくり煙草を喫い、いくつかの支払いを済ませ、食料の買い出しに街へ向かった。途中、道の駅やまくにで野菜をいくつか抱えてレジに並ぶと、レジカウンターのお姉さんから「今年の夏もよろしくお願いします」と声を掛けられた。幸水の出荷まであと2ヶ月。こうして気にかけてくれる人たちの声のおかげで、たぶん梨の世話ができている気がする。梨農家に休みは無いが、気分は案外充実している。

    梅雨入りの雨。

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    山国町小屋川

  • 台風接近中。

    台風が近づいている。生暖かい風が梨棚を抜けるせいで、朝の8時にもう汗をかいている。新高梨の摘果は順調だ。豊水より子房が大きく、枝に残る数も少ないから作業もスムーズ。6月半ばには新高の袋掛けの応援が来る予定だから、それまでには終わりが見えていないといけない。そして出来れば6月中に袋掛けを終えていたい。読めないのは天候だけ。雨が多ければ袋を掛けられず、予定はうしろへと伸びていく。昼過ぎに空が暗くなり、細い糸のような雨が降り出した。降っては止み、ときどき強い風が吹き抜ける。いかにも台風が近い空気。明日は5mmの雨が降るらしい。農作業は難しいかもしれない。

    台風接近中。

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    山国梨棚新高園

  • 花粉樹の実。

    この冬に新植した花粉樹に小さな実が着いている。細巻のシガーよりちょっと大きい程度。新高の子房の4分の1ほどもない。植えたばかりの苗だし、どのみち収穫の予定はこの先もなく、苗木の負担にもなるから小さな実を落としてゆくのだが、どんな味の梨になるのか興味もある。そこで細い枝の中ほどに数個だけ子房を残しておいた。山国の花粉樹の品種はほぼヤーリーだ。ヤーリーは洋梨のような実を着ける。味は早摘みの20世紀に似て酸味が強い。たぶんこの花粉樹の実も食べるには厳しい味なのだろう。あるいは育たずに落果してしまうのかもしれない。

    花粉樹の実。

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    山国梨棚新高園

  • スイカズラ。

    朝、梨棚に到着してすぐ防風ネットの補修をやった。まだ涼しいうち、棚の上に上がっておきたかったからだ。梨棚の外周は図太いワイヤーと鉄骨で支えられており、ヒトひとりが乗ったところでびくともしない。それよりワイヤーを足場に、更に高い位置にあるワイヤーへ手を伸ばす作業が怖い。ネットを手繰り寄せ、ナイロン紐で大きく空いた穴を補修するのだが、もう暑い。風があればまだよいが、作業中に凪いでいるのは夏の農作業あるあるだ。防風ネットを編み、上がってきたカズラを外しているとき、よい香りがした。ツタに引かれて雑草が揺れたからのようだが、匂いの先には特に何もない。棚から降りて茂みの先を見ると、少し離れたところにスイカズラの花が咲いていた。去年も香っていたのはこれだったのか、とそのとき初めて香の主を知った。スイカズラは短い螺旋を描いて鉄柵に巻きついて締め上げる。放置するとカズラの足場となって鉄柵を引き倒してしまうのだ。香の主を切ってしまうのはもったいないけれど、仕方がない。剪定ハサミで全て刈り取ってしまわないと。

    スイカズラ。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 虫罠の材料。

    食料と消耗品の買い出しのついでに、虫罠の材料も買ってきた。罠の設置にはまだ少し早いけれど、必要なときにすぐ用意できないのが田舎暮らしの辛いところ。買えるとき、忘れないうちに買っておくという癖が少しは身に付いてきたのだ。材料は日本酒、酢、それから砂糖、それだけ。混合比は各農家で少しづつ違い、ウチの場合は1:1:適量で混ぜ合わせると蛾からスズメバチまでしっかり獲れる。混ぜた液体はペットボトルに入れ、入り口として小さな窓をカッターで切り開いて、棚に紐でぶら下げておく。収穫期には特にスズメバチがたくさん飛来するので、液体を追加する。秋までに結構な数のスズメバチが捕獲できるが、本来は梨の果汁を吸う蛾を獲りたいのだ。まあ、それでもスズメバチでもいいか、というカンジで今年も罠を設置する予定だ。

    虫罠の材料。

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    酒と酢

  • 有てい果。

    摘果をやっていると梨の枝の下の地面にかなりの子房が散らばる。こんなに落としたのかと驚くほどだ。摘果ハサミでパチンと落とすと棚の鉄骨で弾んでどこかへ飛んで行ったりもするが、行き先に注意することはない。だから梨の木の窪みや軽トラの床に転がっていたり、帰宅して作業着を着替えるとポケットに入っていたりもする。一本の木を切り終えたとき、有てい果が枯れた樹幹に残っていた。有てい果というのは散るはずだった梨の花を尻に残した子房を言い、摘果ではまず最初に落としましょうと教わる。なぜ有てい果が駄目なのかは農夫さんによって意見様々だが、要するに見た目の悪い梨に育つのだ。梨のお尻に爪に似た突起が残るため、芯腐れや病気の発見を邪魔したりもする。摘果で落とした方が良いのは確かだが、今年は昨年と違ってこの有てい果がとても少ない。綺麗な子房が多いのだ。このまますくすくと育ってほしい。

    有てい果。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 棚田に水が入る。

    棚田の下から順に水が入っていく。なぜ順に入れるのか判らないけれども、山国や耶馬溪の山間部に広がる棚田は、数日をかけて必ず順に水が入っていく。最初にトラクターで耕作予定の棚を全て耕しておき、最後に水を入れた方が効率がよさそうなものだが、そうではないらしい。土を掘り返して縁を土塁で囲い、水を入れてから次へ向かう。長い所だと、最後に水が入るまでひと月を超える。そんなに間が空いて大丈夫なのかと思うが、台風がやって来る頃には、どこの棚田も稲穂が重く垂れ下がっている。

    棚田に水が入る。

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    中津市耶馬溪町

  • 乗用草刈機で草刈り。

    乗用草刈機で雑草を刈った。梨棚は足場が傾いて不安定になるほど草が伸び広がってしまったため、忙しい中時間を割いた。梨の木は新梢伸長期にあるが、雑草もそうなのだ。とにかくすぐ伸びる。刈っても翌朝には切断面から新しい芽が伸びている。GSに寄ってガソリンを10ℓほど買い、乗用草刈機に給油してから梨棚を走り回った。時間にして半日。伸び放題だった雑草は綺麗に刈り取られて歩行も楽になった。高価な機械だけれど、無くては困る。この面積を手動の刈払機でやるとなると1日ではとても足りず、そもそもやる気にすらなれない。梨農家には必須の小型農機だ。

    乗用草刈機で草刈り。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • ハマキムシ。

    今年は葉をダメにするアブラムシや虫が少ない。そう感じていたが、やはり居た。前回の梨部会定例会でハマキムシの発生を聞いていたが、昨年より早い発見となった。そんなわけで今日の防除に対ハマキムシ薬を混ぜて散布した。葉巻という名の通り、ハマキムシは葉を丸めてそこに潜み、葉を食べ、巻いた葉の中でサナギとなる。卵から成虫へのサイクルが早いのも厄介な点だ。ハマキムシの天敵はクモ、ハチ、カマキリ、カエルといつものメンバーで、梨棚にたくさん生息している。モリアオガエルやヌマガエルを見つけたらなるべく樹上に移してやるが、その成果が少しはあって発生が抑制できているのかもしれない。と思いたい。

    ハマキムシ。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 険しい山。

    今日の山は寒かった。雨は午後に弱まりやがて晴れ間が見えた。パーカーを着て黙々と摘果を続け、夕方にはすっかり冷え切った。夏日と春先の気温が日毎に入れ替わるのは去年もそうだったが、判っていても体調がおかしくなりそうだ。カレンダーのスケジュール的には、もう新高の袋かけを始めていなくてはいけない。6月には応援の農婦さんに声を掛けているから、余計に急がないと間に合わない。頭の中で予定を組み直しては壊し、また組み立てながら帰路に着く。山と山村しか見えない風景を眺めつつ、険しい山々だなあといつも思う。唐突に迫り上がったこの山のカタチが山国の梨棚を高い場所に置いてくれるのだ。山間部らしい雨や寒さに文句は言えない。

    険しい山。

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    中津市耶馬溪町

  • 粗摘果の効果。

    都合の良い天気予報はいつもハズれ、困った予報は時刻まで正確に天気が崩れる。天気の崩れを事前に知るのは助かるとはいえ、農作業の効率が落ちることには変わりがない。今日は乗用草刈機を動かすつもりでいたが、予報の更新から草刈りの時間が足りないことを知っていた。だからすぐ摘果の仕上げに取り掛かった。冬から遅れに遅れた剪定が、摘花摘果の予定に食い込んだため、剪定をやりつつ粗摘果を済ませたエリアがあり、今朝はそこからのスタートだった。粗摘果というのは、子房を1つか2つに絞り、他を落としてしまうことを言う。一本の枝には絞り込まれた子房が1本づつ並んでいるから、仕上げの摘果が非常にスムーズだ。正午前に雨が降り出したが、粗摘果によって調整済みの枝は作業が捗る。あと2週間早く剪定を終わらせることが出来れば、後の工程が楽になるのだが。

    粗摘果の効果。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 水田と静かな夕方。

    山の一番高い位置にある水田にも水が入った。一般道路にはトラクターの泥の付いたタイヤ痕があちこちで見られる。まだ乾いた田にもこの後、水が順次入ってゆくだろう。昼間からカエルが鳴き、水田の上にはもうトンボが飛んでいる。陽が傾いても気温はそんなに下がらず、薄着でよい。東京にいた頃はこの頃から湿気を感じていたものだが、水田に囲まれたここでは夕方が涼しく快適だ。深夜の雑音に悩まされることもなく、朝まで熟睡できる。目が覚めればまた山へ上がりその日の農作業に汗を流す。もう少し早くここへ来るべきだった。今だからそう考えるのだろうが、素直にそう思う。

    水田と静かな夕方。

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    中津市耶馬溪町

  • 夏日。

    微風。日中の気温は梨棚の木漏れ日の下でも25℃を超えていたかもしれない。山国の道の駅あたりは27℃だった。もう本格的な夏だ。コンビニ駐車場を歩く客は半袖。気持ちよく農作業できる期間はもう残り少ない。風があればもう少し気温が高くても大丈夫だが、無風だと汗をかく。30℃を超えると土の上を歩き回るのですら苦痛だ。ちなみに、成木古木の入り混じった梨棚であれば生い茂った木の葉が影をつくってくれるが、梨棚メンバーのところは新植して数年のため影が落ちない。太陽光を浴びての農作業はさぞ難儀だろうと思う。山を下りる時間になっても気温はたいして下がらず、黒猫2匹が法面の影で寝ていた。これからの山は気温と湿気、そして虫との戦いになる。

    夏日。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 古い倉庫。

    大分県南部の生まれのせいか、稲作農家の多い見北部の風景はいまでも新鮮に感じる。北部には農家の古い家屋がいまでも多数残っていて、錆びついた工場ばかりの無機質な南部とは対照的だ。土壁の大小様々な倉庫や、一軒ごと規格の違う窓。もう人は住んでいない民家が多いけれど、眺めて飽きない。これが南部だと昭和の安普請なトタン壁かモルタルに置き換わる。就農のため帰郷することになったのはほんの偶然からだが、よく知る南部から北部へ移住することになったのは、何かしら意味があるように思えるのだ。

    古い倉庫。

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    中津市耶馬溪町

  • 発熱。

    感染症で発熱してしまう。肩にあった傷を放置したまま、雨の中長時間仕事を続けたのが原因だろうと思う。雑菌が侵入した傷口は数日をかけて化膿し、13日の土曜日に熱が出た。運良く、というのはおかしいが13日は終日雨。晴れていたら熱でぼんやりした頭を抱えて山を上っただろう。しかし、雨に傷口を晒すのが怖く、一日ゆっくり自宅で安静に過ごすことにした。午前中ソファにもたれて眠るのはどのくらいぶりだろう。午後に目覚めてシャワーを浴び、暗くなるまでまた眠った。休日は必要だ。翌朝、何事もなかったかのように熱は下がり、傷口も癒えつつある。

    発熱。

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    中津市耶馬溪町

  • 夏しずくと豊水。

    今年は着果状態が良い。高い気温が続いたせいか子房の膨らみも早く、降ろした枝にびっしり並んでいる。これをひとつづつ摘果用のハサミで落としていく。豊水には夏しずくの枝を刺してある箇所があり、夏しずくと豊水の子房を見比べることができる。枝も葉もそっくりなのに、子房はテクスチャが随分違う。実を着けて品種が何かようやく判るのだ。光沢がある子房は夏しずく。豊水は子房の頃からざらざらして赤味がある。ここまで育ってしまえば、木に施したマーキングはもう必要ない。一目で品種が判る。摘果をやりながら、今年はどのあたりから収穫をスタートするか、ぼんやりと決め初めている。汗が喉を伝うようになると幸水の出荷が始まる。

    夏しずくと豊水。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 草刈りと蛇苺。

    今朝も草刈りからスタート。刈払機にバッテリーを2つセットして、まだ肌寒い梨棚に入る。なぜだか判らないが、日照時間が比較的少ない木の樹幹まわりには蛇苺が群生している。日当たりの良い樹幹まわりは背の高い雑草が茂るから対照的だ。出来れば蛇苺を残しておいた方が見た目がよいけれど、そうも言ってられない。どちらも土が見えない程度に刈り取ってゆく。雑草の根が残ればまたすぐ茂って草刈りの手間が増えるのだが、保水を考えると雑草も必要なのだ。おまけに雑草の根は土が流れ出すのを防いでくれるし、農薬散布車の横滑りを緩和してもくれる。ようするに、伸びたら伸びたぶんを刈る。嫌がってないで頻繁に草刈りをしろということだ。

    草刈りと蛇苺。

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    山国梨棚新高園

  • 気持ちよい夕暮れ。

    日が随分長くなった。梨棚は6時になってもまだ明るい。逆光になって摘果し辛い位置があるため、朝一で新高園の草刈りをやり、山を下る前に豊水幸水園の草刈りをやる。陽が傾いてよいところは気温の低下もある。それほど汗をかかずに刈払機が使えるのだ。まわりの梨棚に人の気配はない。皆もう摘果を終え、次の梨棚に向かったからだ。いつまでも仕事が遅れるのは自分だけ。おかげで焦りが仕事を少しは早めてくれている気がする。草刈りを終えると陽はさらに傾いて、辺りはゆっくり暗くなってゆく。田舎ならではの気持ち良すぎる夕暮れだ。

    気持ちよい夕暮れ。

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    中津市耶馬溪町

  • SSの動力噴霧器。

    防除をやる。梨棚に到着してすぐ農薬散布車を動かし、搭載している動力噴霧器のカバーを外して可動部にオイルを注した。オイル残量をチェックしたとき、車体の傾斜もあるのだろうが、それにしてもオイルの残量が心許ない気がした。オイル残量が見える丸い小窓に液体の影が少ししか映っていないのだ。防除を終了させてすぐ整備士に連絡を取ってみると、来週早々にも行けそうだと言ってくれたが丁寧に断って自分で注すことにした。廃油が出たりと面倒なことは一切ない。オイルの粘度だけ確認して、次の防除の直前に追加してやらないといけない。これまで機械類とは無縁の生活を送ってきたせいか、このへんの知識はまったくない。整備士が顔を見せるとよく無駄話に興じるが、無駄話であっても得るところは大きい。少しづつ馴染んでいくこと、そして何より機械を壊さず維持してゆくことが大事だ。

    SSの動力噴霧器。

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    SS/動力噴霧器

  • 夏みかんの花。

    夏みかんの花が咲いている。咲いている時間は梨より短いらしく、咲いてしばらくすると散り始めた。そんなわけで駐車場はみかんの花びらだらけになっている。人工授粉は勿論やってないのだが、去年はしっかり実をつけた。ハチや風で自然に受粉しているのだろう。実が着くのは風景の変化としてまだよい。鬱陶しいのは伸びてゆく枝だ。みかんの剪定はどうやっていいのか判らないし、収穫するつもりもないからしっかり剪定する必要もないのだが、伸びたぶんをバッサリ切ってよいのか、どうなのか。枯らしてしまうのは勿体無い。夏までにどうするか決めておかないと。

    夏みかんの花。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 黒猫と雨宿り。

    煙草を喫おうと倒壊した小屋まで戻ると、先客がいた。隣の梨棚の黒猫だ。雨が降ると屋根を頼って来ることは知っている。しかしこっちの気配に気付くと静かに離れて行くのがいつもだ。近寄ってくるのは餌があるときだけ。なのに今日は動こうとしなかった。ずぶ濡れのせいなのか、何か他に理由があるのか、1本喫い終えるまで背後でこちらに話しかけるように鳴き続けていた。猫が梨棚をうろついてくれるのは何かと頼もしい。食べ物があれば別けてあげたいが何も持っていない。雨音が小屋のトタン屋根を激しく叩く中、猫に手を振って摘果を続行した。今日はさすがに雨合羽を着たが、腕を上げる作業のためどのみち作業着は両腕からすぐ濡れる。体が濡れ、寒気に耐えられるのはせいぜい3時間だ。気温は15度。摘果に集中しよう。

    黒猫と雨宿り。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 山国川河床。

    早朝に雨が降り、その後は曇り空。暑くも寒くもない気温で摘果が捗る。剪定のときからずっと両腕を上げ、更に摘果で腕も頭も上げ続けているせいか、山を下る時間になると両腕が重い。帰路の途中、どこかでゆっくり煙草が喫いたいと考え、山国川河川敷に軽トラで降りられる駐車場へ向かった。ルート上に沈下橋があり、通過はちょっと危険だ。それでも誰もいない駐車場と広い河川の開放感は魅力的だから安全運転で山国川へ降りた。聞こえてくるのは水量の少ない川の流れと、カエルの合唱。ポケットから缶コーヒーを出し、ゆっくり一本喫った。明日は雨の予報だが摘果を中断するわけにはない。肩を休めたいが、そうも言ってられない。

    山国川河床。

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    中津市耶馬溪町

  • 幸水。

    幸水の子房が豊水と同じくらいの大きさになった。開花は豊水が早く、幸水は少し遅れる。幸水は早生品種で出荷は8月。収穫が始まっても膨らみ続け、大きさは250g〜300gほど。酸味があるけれど夏の最初に口にする人がおおいため、酸味より甘さを強く感じるかもしない。朝早くから梨棚に潜り込み、脚立と足場に乗ってひたすら摘果を続けている。去年の実は小ぶりだった。今年はどうだろう。冬の剪定で枝の数を調整してみたが、良い結果になるといいのだが。

    幸水。

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    山国梨棚豊水幸水園

  • 刈り取られる杉。

    農薬散布車を動かすには軽油が要る。ポリ容器を軽トラに積んで西側の農道を下り、GSへ向かった。いつもは使わない農道だから走る度どこか新鮮な気分になるが、それは杉の伐採と運び出しによって変化する風景のせいかもしれない。しかし今日の変化は大きすぎた。想像より多くの杉が伐採されている。伐採というより、雑草のように刈り取られたと言った方がしっくりくる。蛇行する農道はガードレールのない危険な道に変わり、ずっと下の方まで見渡せる。鬱蒼とした杉の森だったはずの場所は、ごく狭い斜面が作り出した錯覚であり、実はたいした距離を移動していなかったと判る。杉の森に住む霊的な存在は、杉の運び出しとともに何処かへ消えてしまった。

    刈り取られる杉。

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    山国町平小野

  • 初夏。

    田に水が入った。いよいよ初夏へ突入だ。太陽で暖められたアスファルトの上にはカゲロウがいる。つい最近刈ったばかりの雑草がもう伸び、日陰には羽虫とハエが団子になって飛び交っている。冬の間は全く気にすることのなかった雑用が、夏の始まりとともに増える。一番の雑用は草刈りで、毎日仕事を始める前に30分ほどやる。その他、傷んだ防風ネットの修復、草刈りのようだが別に考えておかないといけないツタの監視、刈って干しておいた茅を梨棚に敷く作業、そんな雑用を摘果の合間に定期的にやらないといけない。気温はゆっくりと上昇し、雑用も夏に向けて難儀になっていく。

    初夏。

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    中津市耶馬溪町

  • 終日快晴。

    朝から快晴だ。軽トラに乗り込むときから手元が明るく、不思議と集中力も増す。今日は草刈りをせずに、梨棚に到着するなり摘果を始めた。暖かい日が続くせいか子房の成長も早い。しばらくすると地主の農婦さんがやって来て「着果はどうね」と訊かれた。受粉が失敗ぎみだった昨年に比べて、枝には膨らんだ子房がずらっと並んでいる。特に幸水がすごい。申し分ない、と伝えると農婦さんは「今年は何処も沢山着いてるね」と言い「落とすのが大変ね」と笑いながら付け加えた。剪定ほどではないにしろ、枝の上に広がる葉が子房を隠すせいで摘果もまた大変だ。何度見返しても摘み損ねた子房が残る。脚立に足を乗せると頭が棚の上に出て、太陽光で目が眩む。それでも快晴の日は気分がいい。

    終日快晴。

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    山国町市平

  • 終日雨の日。

    朝から雨だった。降りはたいしたことなかったので山へ上がって摘果を続けていると、やがて強い降りとなった。顔を上げると目に水滴が入る。充分に枝を張った古木の下でしばらく待ってはみたが、雨足が弱まる気配はない。いつもなら頻繁に通過する林業のトラックも工事車両も週末なせいか今日は一台も見かけない。作業着がすっかり濡れたところで仕事を中断して山を下った。いつもより早い帰宅だから、山国川対岸の道路を使ってみようと走ってみたが、道が狭い上に行き止まりと生活道路ばかりで知らない土地に迷い込んだ気分になる。雨は止まず新緑は美しい。誰とも会わず、誰とも会話しない日は農夫の気楽なところでもあるけれど、天候のせいかやはり少し寂しい。

    終日雨の日。

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    山国町中藦